贅沢な希望

2014年05月21日

中間テスト対策も佳境です。毎度のことながら必死です。

さて、今回の中3国語のテスト範囲に井上ひさしの「握手」という短編小説が入っています。

この「握手」、掛け値なしに名文です。傑作と言っていい、ストーリーもさることながら、伏線もあり、効果的な表現技法もあり、登場人物の心情を行間にしみじみと読み味合うことができます。小説とは文体なのだと改めて認識させられます。何より最近の小説にありがちな上っ面だけのお涙頂戴といった「軽さ」がない。何度も教科書改訂を経ていまだに掲載され続けるのも納得できます。この作品をきっかけに読書に目覚める生徒が出てきてもちっとも不思議ではありません。

塾の対策授業として大急ぎで通り過ぎるだけではもったいない文章です。しかし、得点に結びつかないような授業では意味がありませんので場面を追いながら解説プリントをこなしていきます。過去に出題された良問を中心に授業するのですが、生徒たちのほとんどは非常に興味深く聞いてくれます。それはテストに出たときに解けるように、という真剣さともまた少し違った、文章を通して深く思考することへの興味とでも言えるでしょうか。あるいは「文学」への興味とでも言えるでしょうか。

「もっと余裕のあるときに意見を出し合いながらみんなで読みすすめたい。」と塾講師としては贅沢な望みを抱いてしまう作品です。

ところが、ある中学校ではこの結構長い単元を3回ほどの授業で終わったそうです。ノートを見せてもらいましたがあらすじを撫でただけ。

なんだかなあ。中間テストの範囲を進まなければならないとはいえ、なんとも残念な気持ちになります。

国語の先生なのに文学好きじゃないのかなあとまで思ってしまいます。まあ傲慢な意見ですけどね。

せめてテストでは悪問、奇問は出して欲しくないなあ。

文学に対して苦手意識を持つ生徒が増えるかもしれないじゃないですか・・・。

・・・いやいやこういうえらそうなことは高得点を生徒がとってからにしましょう。

とって欲しいなあ。