読書感想文

2014年07月31日

今週は読書感想文を手伝っています。

読書感想文。これほど厄介なものはないのではないでしょうか。
何を読んでいいのかわからない。日頃小説を読む習慣のない生徒が長編文学作品を読みきるための忍耐力をもっているわけはありません。文字言語だけのメディアから情報を取得するためには、少なくとも文字を目で追い、それを頭の中でイメージとして思い浮かべる作業が必要です。これはしんどいことです。現在、映像や音声とともに短時間で大量の情報をそれほどの精神力を必要としないで取得できるメディアはたくさんあります。それらのメディアとともに育ってきている子供達にとって小説を読むことは特別な訓練が必要です。当然学校の国語でその訓練をするわけですが、社会全体で小説を読まなくなっている状況では日常的に読書をする習慣など望むべくもありません。
ここで断っておきますが、僕はこれを嘆かわしいと思っているわけではありません。それは単なる時代の移り変わりに過ぎません。小説以外のメディアから成長の糧となる何かを得ればいいだけのことです。文章など町内会の回覧板を読める程度に読解力があれば十分です。

そもそも今の小中学校の先生自体が文学を読んでいないと思うんですが・・・。以前これから教師になる予定の学生さんに「シェイクスピア」って何ですか?題名ですか?と尋ねられてさすがに絶句したことがありました。それも複数から。それとも国語の先生は読んでいるのかな?もし文学好きじゃないとしたらなぜ読書感想文なんて宿題に出すのだろう?ま、推量で話していても仕方がないか。文学好きの先生、ゴメンナサイ。

また、「親に勧められた小説をだいぶかかって読んだんだけど、なあ~~~んにも感じひんかった。どうしたらいいやろ?」と相談もされました。これ、あながちこの生徒の読解力や感受性を責めるわけにはいかないと思います。読後の感想に「・・・はすごいと思った」、「・・・はかわいそうだと思った」、「おもしろかった」しか書けないような小説は本当に多いですからね。これぐらいの子供向けの話やったらわかるやろ・・・とか考えて選ぶのは子供をなめている証拠です。文体さえ読みやすいものを選んでやれば、テーマがどれほど難解だったり重厚だったりしても、ちゃんと子供はそこから何らかの意味を感じ取っています。言葉で表せないだけです。

というわけで何を読んだらいいかわからない生徒には僕が選んだ小説を紹介しました。基準は極端に短い作品であること。同時に物語として完結した構造をもっているもの。さらに多様な読み方が出来る可能性があり、感想文が書きやすいと思われるもの。そして中学生が読む内容として適切であるもの。

ここまで絞るとなかなか適当なものがありません。
が、浅薄な僕の読書の中からいくつか選びました。個別には挙げませんがすべて大正時代~戦中までのいわゆる「文豪」の作品です。外国文学もあります。

生徒たちは「難しかった」、「古典みたい」、「わからん言葉いっぱい」等、苦労した様子。こちらの予想以上に文体の違いに面食らうのだなと感じました。しかし「全然面白くない」という生徒は皆無です。わかりにくくても、言葉に直せなくても「何か」を中学生は感じ取るのです。
その後、それぞれの作品がなぜ面白いのかという我流の解説を少し話しました。解説のとおりにしか書けないのではないかと少し危惧したのですが、そんなことはありませんでした。
どの生徒も僕の解説は参考にしつつも、自分の言葉で自分の感想を書いています。時間が来て未完成の生徒が大半ですが、おそらく書ききることができると思っています。

中学生。こちらが予想するよりわかってくれない、と苛立つこともあればこちらが思うよりもしっかりと物事を捉え表現して驚かされる存在。
なんとも興味深いです。